Natural Product Synthesis Lover Blog

From JACS

「Natural Product Synthesis Lover Blog」への76件のフィードバック

  1. Uploaded Strepsesquitriol

    https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/11/jacs24-24782.pdf

    著者の一人はType II cycloaddition を利用する天然物合成のレビュー(Chem. Soc Rev. 2020, 49, 7015-7043.)を書いています。鎖状化合物から分子内環化によって一挙にbridge headを含む2環系をつくる有効な骨格構築法です。できた2環系の周辺は立体的な混み合いが異なっているので,立体制御された官能基の構築などが可能になるのでしょう。この論文中にもそのような反応が多く利用されています。
    光学活性アレニルシランが比較的簡単に合成できることも,この[3+2]反応を実用的にしています。比較的シンプルなセスキテルペンの合成を完成させるとともに,より複雑なジテルペンの合成前駆体となりうる4環性化合物を合成して,その有効性を示しています。
    結構混み合っていそうな基質にも応用できるので,光学活性ビシクロ[3,2,1]オクタンの標準的構築法の一つになりそうです。

    One of the authors wrote a review of natural product synthesis using Type II cycloaddition (Chem. Soc Rev. 2020, 49, 7015-7043.). This is an effective framework construction method to create a bicyclic system including a bridge head from an ancyclic compound in one step by intramolecular cycloaddition. Since the different steric hindrances exist in the vicinity of the bridgehead bicyclic system, it may be possible to control the stereochemistry of functional groups. Such selective reactions are used freqently in this research.
    The fact that optically active alenylsilanes are relatively easy to be synthesized also makes the [3+2] reaction practical. In addition to completing the synthesis of relatively simple sesquiterpenes, they
    have shown the effectiveness of this reaction by synthesizing tetracyclic compounds that can serve as precursors for more complex diterpenes.
    Since it can be applied to substrates that seem to be quite crowded, it is likely to become one of the standard construction methods for optically active bicyclo[3,2,1]octanes.

  2. Uploaded Niduterpenoid B

    https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/11/jacs24-25445.pdf

    先に発表したジテルペンの合成と似たような出発物を使ってtetraquinaneを合成し,目的物へ誘導しています。
    https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/11/jacs23-21170.pdf
    なにしろ鍵反応がユニークなものですから,他の骨格形成反応は古典的でも,独自色の強い合成となります。
    ここでの鍵反応は,メトキシ基の導入で転移する結合をコントロールところがポイント。本文にはありませんが,メトキシ基のない場合でも検討していて,その場合,逆の選択性になります。
    エキソメチレンを立体選択的にメチルに還元する反応も簡単ではなく,いろんな箇所で試みて,最終的に本文のように決まったようです。
    鍵段階の前駆体がシクロブタノンへのHorner-Emmons やKnoevenagel で比較的に簡単好収率で合成できるというのが強みでしょうね。カチオンへの転移のカスケードですから,選択性のコントローラーを工夫すれば,まだまだ展開できそうです。

    The tetraquinane was synthesized using a starting material similar to the synthesis of diterpenes presented earlier, and was then derived to the target product.
    https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/11/jacs23-21170.pdf
    The key reaction is unique, so even though the other skeleton-forming reactions are classical, the whole synthesis is highly original.
    The key reaction here is to control the bond transfer by introducing a methoxy group. Although not mentioned in the text, the case without a methoxy group was also carried out, in which case the selectivity was reversed.
    Stereoselective reduction of exo-methylene to methyl group was also not easy, and it has been tried in various places and finally decided as shown in the text.
    The strength of this method is that the key precursor can be synthesized in relatively easy and good yield with Horner-Emmons or Knoevenagel and cyclobutanone. Since this reaction is a cascade of bond transitions to cations, it may still be possible to develop further, if a selectivity controller is devised.

  3. Uploaded Scabrolide B, Sinuscalide C, Ineleganolide, and Horiolide

    https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/10/jacs24-24250.pdf

    2022年のScabrolide AにつづくScabrolide B(骨格は別物)の合成です。Aと同様にRCMで真ん中の環(Bは七員環)を作ろうとしましたが,基質によっては,後の官能基変換や環化自体がうまくいきませんでした。そこで,ケトンの分子内アルケニル化を使って,β-γ不飽和ケトンをつくり,異性化し共役二重結合とするという反応を鍵段階として使っています。通常の条件ではすべてうまくいかず,苦労して塩基性条件を見つけています。
    ケトンのアルファ位ををビニルヨウ素と反応させるんですが,ビニルヨウ素をアルデヒド(ビニルヨウ素と同じ酸化レベル)にすれば,超古典的アルドール縮合―脱水反応ですね。アルデヒドより反応幅の狭いビニルヨウ素を使えるというのが特徴ということでしょうか。
    Scabrolide BからIneleganolideやHoriolideへの変換が弱い塩基で容易に進むことを見出し,生合成経路を実現どさせています。エピ化を含む古典的反応のカスケードを楽しむことができます。

    This is the synthesis of Scabrolide B following Scabrolide A (skeleton is different) in 2022. They used intramolecular alkenylation of ketones to make β-γ unsaturated ketones and isomerize them to conjugated double bonds as the key reaction step. They have had a hard time finding basic conditions for this reaction, as it does not work under normal conditions.
    The alpha position of the ketone is reacted with vinyl iodide, and considering the vinyl iodide can be made from an aldehyde (same oxidation level), it is a superclassical aldol condensation-dehydration reaction. I guess the feature of this reaction is that vinyl iodide, which has a narrower reaction range than aldehydes, can be used.
    You can enjoy the cascade of classical reactions including epimerization.

  4. Ganoapplanin(ラセミ)を追加。

    https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/08/jacs24-22937.pdf

    1,4付加で生じるエノラートをアルデヒドでトラップするという,よく使われる3成分連結法の変形版が鍵。
    リチウムやマグネシウムカルバニオンの分子内1,4付加の試みから初めて,条件を種々検討し,
    トリエチルボランとBu4SnHを同時に用いてラジカル環化を行い,生じたホウ素エノラートをアルデヒドでトラップする
    これまでに報告のない条件を見出しています。
    トリエチルボランはラジカル反応開始剤として使われると同時に,ラジカルをエノラートとしてトラップする。
    1,4付加物を取り出した(取り出せる)後,エノラートにしてアルドールというstepwiseなやり方は,なぜかことごとく失敗してます。

    6員環ラクトン,C4フェノールをlate stage oxidationで作るというのも,ヨウ素をラジカル源として使うのも,
    また最後の保護基としてアセチル基をつかうのも,実験で試行錯誤した結果です。

    ————
    The key step is a variant of the commonly used three-component linkage method, in which the enolate produced in the 1,4 addition is trapped by an aldehyde.
    Starting with attempts of intramolecular 1,4-additions of lithium and magnesium carbanions, they have investigated a variety of conditions. Finally they have found the new conditions, where the boron enolate , resulted by radical cyclization using triethylborane and Bu4SnH simultaneously is trapped with an aldehyde.
    Triethylborane is used as a radical reaction initiator and as a reagent that traps the radical as an enolate.
    The stepwise approach of aldol reaction with enolate after isolating the 1,4 adduct (possible) has all failed for some reason.

    After many expperimets, (1) the six-membered ring lactone and C4 phenol parts were made by late stage oxidation, (2) iodine was used as a radical source, (3) the acetyl group was used as a protecting group at the last stage.

  5. (−)‑Crinipellins A and Bを追加。

    https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/08/jacs24-21250.pdf

    4つの過去合成の鍵段階が書いてあるので比較すると面白い。
    1993年 アルドールとグリニャール型1,2付加
    2014年 トリメチレンメタン(TMM)の付加
    2018年 ポーソン・カーン反応
    2022年 dearomatization誘起的[5+2]付加,HATを経る転移反応(エキソメチレンが核間メチルになるやつ)
    すばらしいですね。

    今回は2+2光付加とCargill転移です。
    後者は1974年に発表された反応で1985年くらいまでちょこちょこと利用された例が引用されています。2+2で混み合った(三つの四級中心を含む)四員環を合成できることからこの反応を引っ張り出してきたのでしょうか。
    形式としては「六員環からカルボニルを切り出して,四員環に埋め込む反応」 とのこと。
    カルボカチオンへの転移なのですが,面白くて,
    ビシクロ[4,2,0]→[3,2,1]→[3,3,0] もしくは
    ビシクロ[4,2,0]→[3,3,0]→[3,2,1]
    中間体カチオンの骨格が入れ替わってます。
    論文中の化合物の計算によると,前者はエポキソニウムカチオンを経るstepwise dyotropic,後者は酸によってはconcerted dyotropicで進みます。

    この論文では前者の反応を使って天然物を作っていますが,後者の反応との使い分け条件を見つけたことも研究成果であると言ってます。確かにということで,天然物合成への応用を期待。

  6. Hypersampsone Mを追加

    https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/08/jacs24-18886.pdf

    最後の2つの環化(アルドールとDieckmann)とアシル化が予想外の形式で効率よく(計画した反応数をふやすことなく)進んでいます。苦労は報われるものです。最後のベンゾイル化は低収率ですが,ホモアダマンタン系のPPAPに特徴的な橋頭位のアニオンの発生しにくさを見出しています。
    エノンにプロパジル亜鉛を反応させ,ダブルマイケルタイプのDAと似た機構で一挙に五員環をつくっています。どの程度拡張できるんでしょ。いろいろ応用できると便利そう。
    はじめ光学活性体の七員環エノンをつかって5−7系の骨格をつくる計画でしたが,立体選択性を改善できず,5−6系を環拡大する経路に変換しました。最初のHATマイケルを不斉反応にすれば光学活性体が合成できることになります。

  7. Pleurotin を追加

    https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/07/jacs24-18230.pdf

    1947年に構造決定され, 1988年に初合成(ラセミ体)された化合物です。
    photo-redox触媒を使うアルデヒドのαーアルキル化以外は古典的な反応を用いています。
    立体制御はほぼ完璧。C3からのsubstrate controlです。
    C4,5,8,9,10を誘導していくんですが,
    C3>C10, C3>C5, C3>C4, C5+C10>C8+C9
    このうちC3>C4は非環状的面制御なので当初からは予想困難かも。
    結果は上々で,DFT計算で高選択性を説明しています。

    光学活性体としては初合成の予定だったが,投稿中にラセミ体の合成を発表していた先行グループから論文が出たとのこと。
    古い化合物でも競合してしまうものなんですね。

  8. Enteropeptin Aを追加。

    https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/07/jacs24-17629.pdf

    四級不斉中心を持つチオモルフィリン骨格合成がこの論文の価値のほとんど全てとも言え,
    反応機構やそのdiastereoselectivity についてもSIで詳しく述べています。
    https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/07/jacs24-17629sipart.pdf

    当初心配してた共役付加は問題にならなかったようですが,遷移金属や,HATの条件を使った水素化はうまくいかず,エナンチオ選択的プロトン化に使われている触媒で得られた結果(15%)をもとに,条件を最適化して61%までもっていってます。

    生合成も同じ機構でいってると(私には)思えたのですが,天然物と同じL-システインを使うと,天然とは逆の立体をもつアミノチオアセタールがexclusiveに出来ます。
    そこでD-システインを用いてアミノチオアセタール部分をつくり,システイン部分を異性化するという手法で,天然物と同じ立体のチオモルフィリン環を作っています。おもしろいです。

  9. the Truxillateを追加。
    https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/07/jacs24-14948.pdf

    昨年head to headのタイプのレギオおよびエナンチオ選択的な合成法を発表していたが,
    そのとき使ったことのあるらしいアシルイミダゾールをhead to tailタイプ合成へと展開している。
    ただし,head to tail タイプはメソ体なので,不斉誘導は不要。
    固相で光付加反応を起こす場合,二重結合の距離が4.2オングストローム以内である必要があるというShmidtの法則については1964年と1971年の論文が引用してあるから,長い歴史をもつ研究テーマなんですね。
    プロトン化で生じるカチオンとベンゼン環のクーロン力でこの条件を満たすことができるようになる。ただし,ちょっとした構造変化で結晶構造が変わり,この条件を満たすことができなくなる。おもしろいのは,その時,水を加えて結晶化させると,結晶構造が変化し,条件が満たされることがある(5例)。
    ベンゼン環の電子密度が下がるとクーロン力が弱くなり収率が下がるなど,反応性の変化がうまく説明できる。

  10. (−)-Bipolarolide Dを追加。
    https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/07/jacs24-14427.pdf

    キラルエナミンとペンタフルベンの[6+2]環化付加で5−5−5環系を不斉構築するというのが新しい。
    生成物はアミンの脱離によってフルベンの部分構造をもつため,そこへのケトンα位へのアルキル化とHeck環化反応で4つ目の五員環をつくる。そのあとで2つカルボニルへの1,2付加で側鎖を導入。
    50%以下の段階もいくつかあるが,短工程で上手につくってる感じです。

    トリキナン類の合成にも使えるかも。

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