C3の異性化条件は大きな発見でした。反応機構も面白い。
フリーの水酸基があっても量論量の試薬を用いればOK。
キラルなリン酸触媒によるPictet-Spengler cyclizationも高い収率とeeです。
using only tryptamine and pyrone as the starting materials in an enantioselective, atom-efficient, step-efficient, protecting-group-free, concise and divergent manner.
と自賛してますが,その通りです。
Scabrolide A and Havellockateを追加。
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/06/jacs24-14422.pdf
鍵反応である[2+2+2]様式 exo-exo-endoラジカル環化がすべてです。
はじめの5-exo-5-exoでできるトリシクロ体がrigidな構造になり,
そのため最後の6-endo環化(一般に不利とされているらしい)のための反応サイトが近くなって,
この反応はrobustになるということらしい。最後のendo環化のTSエネルギーが低くなっていることなどを計算で説明しています。
2つのアルコールをtetherとして,六員環上の官能基や置換基をうまく導入しています。
天然の類縁体の先行全合成(8例)がSIで紹介されていますが,半数がDAタイプの反応を利用しています。
DAのジエン部分を2つのエンに分けると,形式的には[2+2+2]のカスケードが可能になるわけですので,構造によっては,ラジカルカスケードが可能,有効になるということでしょう。
Keramaphidin B and Ingenamineを追加。
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/05/jacs24-11054.pdf
dynamic crystallizationでDA反応のレギオ選択性を制御しています。
4つの化合物(2つの出発物と2つの生成物)があり,そのうちの一つ(必要な生成物)の溶解度が他の化合物の50分の1以下ということで, ろ過だけで純品を77%で取り出すという快挙。
エチレンアセタールをジブチルアセタールにして溶解度を上げると,キネティックコントロールで不要物を優先,LiClを加えるとreversibleな反応になってthermodynamic control で低選択性ながら必要物が得られる。目的物外以外を回収して反応を繰り返せば目的物に収束することになりますが,エチレンアセタール使うと目的物の溶解度が激減。dynamic crystallizationが可能になりました。
Z選択的なWittig反応とアミドのダブルアルキル化で2つのマクロ環を作っています。古典的ですが,可能な副生成物の数は少なく,通常の閉環メタセシスを使うより実用的らしい。
+)-Randainin D and (+)-Barekoxide を追加。
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/05/jacs24-11486.pdf
最近よく聞く光レドックス触媒を具体的に勉強できてよかった。
ここでは
励起されたイリジウム(III)がカルボン酸塩なら酸化剤,
カルボン酸エステルなら還元剤として働いて,触媒サイクルを回します。
カルボニルα位のラジカルは,容易に還元されエノラートになり,
残念ながらマイケルアクセプターと反応しなかった。
そこでラジカルが還元されない(イリジウムが還元剤となる)条件で,アリルすずと反応させるとうまくいった。
イリジウム(III)すごいですね。
4級中心を含むアリル化がができるから,これを RCMに使うこともできる。
Melognineを追加
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/05/jacs24-9526.pdf
2つ(ニトロンとアゾメチンイリド)の1,3双極子付加で窒素を含む五員環を作るとして,(これだけでもきれい)
付加される二重結合を天然物に従ってつなぐと,エキソ共役ジエンを含む十員環状アミンになったので,(きれい)
それならアセチレンから(モダンできれい)
という感じだったのかと想像。
1,3双極子付加,エンインメタセシス,閉環メタセシス。二重結合が大活躍です。
ニトロンの前駆体のヒドロキシルアミンがレトロコープ脱離でN−オキシドになり,
それがヒドロキシルアミンの酸化剤になるとか,おもしろい化学もあります。
Yohimbine alkaloids を追加。
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/05/natcom24-0941.pdf
ピロンの二量体をセコロガニン部分と気づいたところが成功の起点。
フマルアルデヒド酸の二量体(キラル)をセコロガニン部分としてうまく使った類縁体の合成と対照的です。
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/02/jacs24-0118.pdf
C3の異性化条件は大きな発見でした。反応機構も面白い。
フリーの水酸基があっても量論量の試薬を用いればOK。
キラルなリン酸触媒によるPictet-Spengler cyclizationも高い収率とeeです。
using only tryptamine and pyrone as the starting materials in an enantioselective, atom-efficient, step-efficient, protecting-group-free, concise and divergent manner.
と自賛してますが,その通りです。
Sorbicillactone Aを追加
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/05/natcom24-0039.pdf
出発物から4段階11%.
生合成で重要な求核剤であるazlactoneを化学合成,
キラル三級アルコールを含むマイケルアクセプターを酵素合成し,
混ぜると
モデル実験とは異なり
分子間マイケル反応から反応が始まり,一挙に目的物が得られる。
C5->C6の不斉誘起は理解できますが,C6->C9は?
でも4種の類縁体が同じ立体選択性で得られています。
分子内マイケルで作ろうとしてうまくいかず,その時の分解物の中に
アズラクトン(多分不安定)を見つけたのが成功の源です。
(‒)-lucidumoneを追加
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/04/natcom24-2467.pdf
tandem O-deprotection/Prins cyclization/Cycloetherification sequenceが売りですが,
もともとTHF環はoxa-Michael でつくるつもりじゃなかったのでは。
実際,通常のPrins ー>酸化/O-deprotection/Cycloetherification(ほぼ同じ工程数)
で同じものができています。
ビシクロ[2,2,2]といえばDiels-Alder で,ケイ素をはさむ分子内DAが基本戦略でしょう。
Evansの不斉DAが実用的に使われています。天然物はラセミ体らしいですが。
位置選択的なハイドロボレーションがうまくいってクロスカップリングで芳香環を結合させてます。
DAの前に芳香環を入れとく手もありそうですけど。
鉄触媒のワッカー酸化が役に立ちました。
Salarin C and Aを追加
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/04/jacs24-8456.pdf
6つの不斉中心のうち3つはプロリンをつかうkinetic resolution を含む不斉アルドールで一挙に構築。
キラルなトランスエポキシドを含むビルディングブロックとして実用的に利用できそう。
あとの3つはジアステレオ選択的還元とジアステレオ選択的エポキシ化。
オキサゾール環をふくむマクロライドが不安定と報告されてたけど,そうでもなかったらしい。
C-C結合の伸長はWittig型,クロスカップリング,環化はRCM。定番と言えば定番でしょうか。
Rubriflordilactone Aを追加
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/04/jacs24-7198.pdf
long-range stereocontrolled intermolecular o-QM type [4 + 2]-cycloadditionが一番のウリ。
DF計算もして,しっかり議論しています。
先行2研究が離れたキラルフラグメントをつくり,真ん中でベンゼン環を作りながら繋げるのとは逆で,
ベンゼン環から出発します。キラル中心が離れたところにあるから,先行研究の逆合成の方がリーズナブルと思えますが,
ジアステレオ選択的Prinsで作った立体中心に不斉誘導されながら,ジアステレオ選択的[4+2](エキソ付加)で3つの
不斉中心が一挙に出来て,結果オーライです。
キラルなプロトン酸を用いたPrins反応を試みていますが(SI),eeは0%で残念。
2つの不斉中心があるAB環-C環部分のエナンチオマー合成が,光学活性体の形式合成になります。
Dynobactin A を追加
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/04/jacs24-6444.pdf
2022年に発表された構造の合成を2024年に発表。
インドールを含むマクロラクタムの経験があったとはいえ,2つのβ-アリール置換アミノ酸の一般的合成法にたどり着くまで相当な試行錯誤をしていますし(SI),不安定な部分の前駆体の選択や,酸化,組み立ての順序なども検討する必要があり,これを2年かそこらでやりとげたというのは驚きです。LLS16段階。
見せ場は
イミダゾールによるアジリジンの開裂のところで,アジリジンの2量化を防ぐため,pKa の小さい臭素化イミダゾールを用いて収率を実用的にしたところとか,カルボキシル基の前駆体としてメチルフランを用いてepi化を防ぎ,カルボキシルへの変換のタイミングを見つけたところなどいろいろありますが,何よりも hidden strategic symmetryを見つけ,同じ手法で調整できる光学活性アジリジンを2つのβ-アリール置換アミノ酸の出発物質にするルートを実現させたことでしょう。綺麗です。