ohira-sum@kxe.biglobe.ne.jp 2024年4月5日 3:10 PM Aspersteroid A and Bを追加。 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/04/jacs24-6481.pdf two phase synthesis の感じがしたので,著者について調べてみたら, Baran先生のところでポスドクやってた経験のある人でした。 ラジカル環化のところ,3つのラジカル中間体を経ているのに,完全に立体選択的で収率98%です。 最後のラジカルトラップも立体選択的。one spotのtlcを見た実験者の驚きが目に浮かびます。 この立体を逆転させるエポキシドの還元でも,分子間の水素移動を除くことでエピ体の生成なし。 late stage oxidationsには50%以下の反応も結構あるけど,”concession steps”が少なく効率的。 エルゴステロールを出発物とするのも現実的。 混み合った場所にオキシラジカルを発生させると,混み合ってる分,近くからHATがおこり 選択性が出る可能性もあるってことでしょうか。 返信
ohira-sum@kxe.biglobe.ne.jp 2024年3月21日 10:07 AM Portiminesを追加。 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/03/nature23-0507.pdf Natureに載ったBaranの論文,合成のところだけ読みました。 得意のtwo-phase合成,テルペノイドだけじゃなくマクロサイクルにも有効なことを示しています。 Furstner先生の触媒によるRCAMが強力な味方。イミン窒素をTrocで保護して触媒量を減らし,収率も上げてますが,保護しなくても反応はいきます。outstanding functional compatibility ですね。 3重結合は水酸基を5-エンド付加させることにより,masked ketoneとして使われます。 分子内アセタールをかけてアミンと2つのケトンとアルコールを一挙に保護しますが,rigidな多環系になって,位置および立体選択的な酸化還元を手助けるという超美技。 C14,C15の酸化には苦労してますが,C5とC13(ケトンのアルファ位)はあっという間の2段階で終了。 使われる金属触媒は,Co,Cu,Mo,Au,Ru,Pd。 CuについてはCorey先生の論文(1972年)の引用があります。 こういう論文,後半だけを読む人のほうが多いんでしょうね。 返信
ohira-sum@kxe.biglobe.ne.jp 2024年3月16日 11:36 AM Penicibilaene A and B を追加。 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/03/jacs24-4363.pdf t−BuOKだけで進むタンデムコニア+二重結合異性化は,計算による説明もふくめて,すばらしいです。 立体制御については,すべて古典的substrate control。前半の反応ーージアステレオ選択的マイケル付加+アルキル化,続くキレーション制御Girgnard2つで四つの連続不斉点(最初の一つは消えて生まれ変わり,一つは反転させることになりますが)を作っているのも,大したものです。 一番苦労したらしいのはエキソメチレンの立体選択的水素化。最近流行のHATもだめで,Crabtree触媒(1979年の論文を引用)でのみ成功。 このトリシクロ系をもつ天然物としてはシンプルな化合物なので,より複雑な天然物合成へ展開するのでしょうか。 先行論文が2つ紹介されていますが,杉田先生のアルドール+RCMの骨格構築もきれいです。 元報は読んでないけど,酸化還元の少ない経路を作れそう。 返信
ohira-sum@kxe.biglobe.ne.jp 2024年3月10日 3:10 AM Psammaplysins A, M, O, and Q and Ceratinamide Aを追加 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/03/jacs24-2913.pdf 2022に発表された2つの先行研究とダブルところがあって苛立ったことでしょう。 先行のMagauerらの合成はジアステレオ選択的です。 一方,この研究ではアルコキシメチレン化のときE体を選択的に作れば一方のジアステレオマーが選択的にできることになるので, 1:1でできるZ体を分離してE,Z混合物に異性化する反応を種々検討し,17%ながらE体を得ています。無駄な異性体は作らないという体にはなってます。 先行研究がラセミ体なので,光学活性体の合成が必須だったでしょう。 アルドールで有効な補助剤が使えそうですが,有名な4種の補助剤でほぼ選択性なし(SI)。 金属のかかわらないとこんなものなのでしょうか。 最終的には光学分割とはいえ有効な方法が見つかってよかった。 選択性なくても補助剤使った反応のあとジアステレオマー分離して補助剤除けば光学分割になり,SIにもそれらしきことが書いてあります。 詳しくは書いてないのでわかりませんが,採用されなかったのは実用性の問題なのか,インパクトの問題なのか。 類縁天然物合成に有効なZrを使ったエステルからアミドへの直接変換(β位水酸基が必要)を見つけたのも,成果の一つ。 返信
ohira-sum@kxe.biglobe.ne.jp 2024年3月7日 10:44 AM (+)-Pedrolideを追加。 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/03/jacs24-2928.pdf Carreiraらはカラン骨格部分をはじめに作ってて対照的。 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/06/jacs23-8332.pdf ビシクロ[2.2.1]ヘプタンはペンタジエンと不飽和エステルとのIMDAでつくるというのはおなじ。 苦しんだところはケトンの立体選択的なアリル化,シクロプロパン化,ジオールの選択的アシル化で,特にあとの二つは先行研究とは異なる反応性のため,新たな条件を見つける必要がありました。 プロリン誘導体を触媒とするエン反応->IMDAで,キラルな下半分四環系を100gスケールで調整できたから,広範な最適化ができたのでしょう。 PMP基は市販品由来で,保護されたカルボキシル基(保護された水酸基)として使っているのも印象的(”脱保護”の収率は必ずしも良好ではありませんが)。 全立体中心が1つの立体中心から誘起されており,それはプロリンにさかもどります。 返信
ohira-sum@kxe.biglobe.ne.jp 2024年3月5日 2:22 PM (-)-Hunterine Aを追加 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/03/jacs24-4340.pdf aza-Cope/Mannich反応をつかったこの手の化合物の合成は定番らしいですが,これだけ骨格が変わると,反応機構も楽しめる収束性のよいrootになっています。中間体からaspidospermidineの合成にも繋げていますが,幾多あるらしい従来法と比較してみたいところです。 非対称化で合成したキラル二環性ケトアルコール,四級中心を含むから,他にも使えそうですね。SI見ると基質のジケトンの合成法いろいろ検討しています。 最初のシクロペンテノンを求核剤として使う反応と,最後のtriazolineの反応性の違いを窒素のpyramidalityで説明しているところが印象的。 返信
ohira-sum@kxe.biglobe.ne.jp 2024年2月22日 6:02 PM Taxolを追加。Communication じゃありませんが。 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/02/jacs23-25894.pdf 難関化合物への2つの経路を,研究室内の2つのグループがやって,2つとも完成させて, 同じ年に論文出してくるという… Sarpong先生の論文に一般の逆合成は単純な方に向かうというような記述がありましたが, A 環とC環に分けた後 A環をspiro[5,4,0],C環をbicyclo[3,2,1]の双環系に”逆合成”しています。 保護基,化学,位置,立体選択性コントローラーとして機能させるわけです。 Conclusions では,広範に応用可能な方法論とありますが,相当なセンスが要求されそうですね。 ケトンをエノールトリフレートとして”保護”するとか, ”保護基”のメチレンアセタールの炭素が最終産物に残っているとか,あれやこれや巧みです。 定番の変換反応もたくさんあって,ヒドロキシメチル基のメチルケトンへの変換などは,微笑ましくてホッとします。 返信
ohira-sum@kxe.biglobe.ne.jp 2024年2月18日 7:10 PM Corynantheine-Type Corynanthe Alkaloids を追加。 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/02/jacs24-0118.pdf インドールからインドキシル型,スードインドキシル型への変換が肝でしょうか。 ピナコール転移型の反応で,生合成経路としてすでに想定されていたのかな。 歴史のあるアルカロイドだから,合成反応についても文献をしっかり精査して,最適化した感じもします。 インドールからの反応機構を比較すると https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/02/indol2indoxyl.pdf 保護基を使わないというのも売りにしていますが,官能基の数がさほど多くないので,あまりインパクトはありません。 キラルなNHC触媒で合成した,隣り合ったキラル中心をもち,4方向に変換可能な官能基をもつ出発物質が魅力的です。 セコロガニンが透けて見えそう。 返信
ohira-sum@kxe.biglobe.ne.jp 2024年2月14日 4:27 PM Daphenyllineを追加。 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/02/jacs24-1813.pdf 想定していたideal final step であるGrewe-type cyclizationがうまくいくと,8段階合成となり,すごくかっこよかったのですが。 回り道をすると,途中不要なジアステレオマーのほうが多くできてしまうという結果ですが,たいしたdrawback とは思えません。他のすばらしい骨格構築,官能基変換,立体制御などを見ると。 論文で強調されているのは「通常の」逆合成とは異なり,より複雑な系に逆合成することも有用であるというような事(?)。 2重結合から小員環(三員環や四員環)を作り,適当な結合を切断して官能基や立体を整えていく手法は,ごく普通の手法だと思うのですが,日頃からcomputer-aided synthesis planningを設計されている方から見るとこういう表現になるのでしょうか。 マイケル反応によるメチル基導入の代替法として,広く使えそうなシス-ヒドロメチル化を開発しています。 [2+2]付加と還元の2段階ですが,ここでの還元はアミドの還元まで含めると6個のハイドライドを使っており,2つのメトキシカルボニル基が2つのメチル基に還元されるレベル。収率64%は奇跡的。しかも立体選択的です。 返信
ohira-sum@kxe.biglobe.ne.jp 2024年2月9日 7:03 PM (−)-Daphenyllineを追加。 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/02/jacs24-1262.pdf カルボニルからC2酢酸ユニットを伸ばす方法はいろいろありそうですが, ここでは,Wittigメチレン化(C1)+ヒドロカルボキシル化(C1)を使っています。定番になるかも。 4置換ベンゼンは3つの分子内Friedel-Crafts反応で組み立てます。 同じ反応を繰り返すことで(反応の種類が,少なくなり)合成経路はシンプルになっています。 評価すべきレトロシンセシスかと。 2つの不斉中心を持つ非環状化合物を,触媒的不斉合成で,調製して,ここからすべての立体を不斉誘導します。 返信
Aspersteroid A and Bを追加。
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/04/jacs24-6481.pdf
two phase synthesis の感じがしたので,著者について調べてみたら,
Baran先生のところでポスドクやってた経験のある人でした。
ラジカル環化のところ,3つのラジカル中間体を経ているのに,完全に立体選択的で収率98%です。
最後のラジカルトラップも立体選択的。one spotのtlcを見た実験者の驚きが目に浮かびます。
この立体を逆転させるエポキシドの還元でも,分子間の水素移動を除くことでエピ体の生成なし。
late stage oxidationsには50%以下の反応も結構あるけど,”concession steps”が少なく効率的。
エルゴステロールを出発物とするのも現実的。
混み合った場所にオキシラジカルを発生させると,混み合ってる分,近くからHATがおこり
選択性が出る可能性もあるってことでしょうか。
Portiminesを追加。
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/03/nature23-0507.pdf
Natureに載ったBaranの論文,合成のところだけ読みました。
得意のtwo-phase合成,テルペノイドだけじゃなくマクロサイクルにも有効なことを示しています。
Furstner先生の触媒によるRCAMが強力な味方。イミン窒素をTrocで保護して触媒量を減らし,収率も上げてますが,保護しなくても反応はいきます。outstanding functional compatibility ですね。
3重結合は水酸基を5-エンド付加させることにより,masked ketoneとして使われます。
分子内アセタールをかけてアミンと2つのケトンとアルコールを一挙に保護しますが,rigidな多環系になって,位置および立体選択的な酸化還元を手助けるという超美技。
C14,C15の酸化には苦労してますが,C5とC13(ケトンのアルファ位)はあっという間の2段階で終了。
使われる金属触媒は,Co,Cu,Mo,Au,Ru,Pd。 CuについてはCorey先生の論文(1972年)の引用があります。
こういう論文,後半だけを読む人のほうが多いんでしょうね。
Penicibilaene A and B を追加。
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/03/jacs24-4363.pdf
t−BuOKだけで進むタンデムコニア+二重結合異性化は,計算による説明もふくめて,すばらしいです。
立体制御については,すべて古典的substrate control。前半の反応ーージアステレオ選択的マイケル付加+アルキル化,続くキレーション制御Girgnard2つで四つの連続不斉点(最初の一つは消えて生まれ変わり,一つは反転させることになりますが)を作っているのも,大したものです。
一番苦労したらしいのはエキソメチレンの立体選択的水素化。最近流行のHATもだめで,Crabtree触媒(1979年の論文を引用)でのみ成功。
このトリシクロ系をもつ天然物としてはシンプルな化合物なので,より複雑な天然物合成へ展開するのでしょうか。
先行論文が2つ紹介されていますが,杉田先生のアルドール+RCMの骨格構築もきれいです。 元報は読んでないけど,酸化還元の少ない経路を作れそう。
Psammaplysins A, M, O, and Q and Ceratinamide Aを追加
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/03/jacs24-2913.pdf
2022に発表された2つの先行研究とダブルところがあって苛立ったことでしょう。
先行のMagauerらの合成はジアステレオ選択的です。
一方,この研究ではアルコキシメチレン化のときE体を選択的に作れば一方のジアステレオマーが選択的にできることになるので,
1:1でできるZ体を分離してE,Z混合物に異性化する反応を種々検討し,17%ながらE体を得ています。無駄な異性体は作らないという体にはなってます。
先行研究がラセミ体なので,光学活性体の合成が必須だったでしょう。
アルドールで有効な補助剤が使えそうですが,有名な4種の補助剤でほぼ選択性なし(SI)。
金属のかかわらないとこんなものなのでしょうか。
最終的には光学分割とはいえ有効な方法が見つかってよかった。
選択性なくても補助剤使った反応のあとジアステレオマー分離して補助剤除けば光学分割になり,SIにもそれらしきことが書いてあります。
詳しくは書いてないのでわかりませんが,採用されなかったのは実用性の問題なのか,インパクトの問題なのか。
類縁天然物合成に有効なZrを使ったエステルからアミドへの直接変換(β位水酸基が必要)を見つけたのも,成果の一つ。
(+)-Pedrolideを追加。
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/03/jacs24-2928.pdf
Carreiraらはカラン骨格部分をはじめに作ってて対照的。
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/06/jacs23-8332.pdf
ビシクロ[2.2.1]ヘプタンはペンタジエンと不飽和エステルとのIMDAでつくるというのはおなじ。
苦しんだところはケトンの立体選択的なアリル化,シクロプロパン化,ジオールの選択的アシル化で,特にあとの二つは先行研究とは異なる反応性のため,新たな条件を見つける必要がありました。
プロリン誘導体を触媒とするエン反応->IMDAで,キラルな下半分四環系を100gスケールで調整できたから,広範な最適化ができたのでしょう。
PMP基は市販品由来で,保護されたカルボキシル基(保護された水酸基)として使っているのも印象的(”脱保護”の収率は必ずしも良好ではありませんが)。
全立体中心が1つの立体中心から誘起されており,それはプロリンにさかもどります。
(-)-Hunterine Aを追加
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/03/jacs24-4340.pdf
aza-Cope/Mannich反応をつかったこの手の化合物の合成は定番らしいですが,これだけ骨格が変わると,反応機構も楽しめる収束性のよいrootになっています。中間体からaspidospermidineの合成にも繋げていますが,幾多あるらしい従来法と比較してみたいところです。
非対称化で合成したキラル二環性ケトアルコール,四級中心を含むから,他にも使えそうですね。SI見ると基質のジケトンの合成法いろいろ検討しています。
最初のシクロペンテノンを求核剤として使う反応と,最後のtriazolineの反応性の違いを窒素のpyramidalityで説明しているところが印象的。
Taxolを追加。Communication じゃありませんが。
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/02/jacs23-25894.pdf
難関化合物への2つの経路を,研究室内の2つのグループがやって,2つとも完成させて,
同じ年に論文出してくるという…
Sarpong先生の論文に一般の逆合成は単純な方に向かうというような記述がありましたが,
A 環とC環に分けた後 A環をspiro[5,4,0],C環をbicyclo[3,2,1]の双環系に”逆合成”しています。
保護基,化学,位置,立体選択性コントローラーとして機能させるわけです。
Conclusions では,広範に応用可能な方法論とありますが,相当なセンスが要求されそうですね。
ケトンをエノールトリフレートとして”保護”するとか,
”保護基”のメチレンアセタールの炭素が最終産物に残っているとか,あれやこれや巧みです。
定番の変換反応もたくさんあって,ヒドロキシメチル基のメチルケトンへの変換などは,微笑ましくてホッとします。
Corynantheine-Type Corynanthe Alkaloids を追加。
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/02/jacs24-0118.pdf
インドールからインドキシル型,スードインドキシル型への変換が肝でしょうか。
ピナコール転移型の反応で,生合成経路としてすでに想定されていたのかな。
歴史のあるアルカロイドだから,合成反応についても文献をしっかり精査して,最適化した感じもします。
インドールからの反応機構を比較すると
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/02/indol2indoxyl.pdf
保護基を使わないというのも売りにしていますが,官能基の数がさほど多くないので,あまりインパクトはありません。
キラルなNHC触媒で合成した,隣り合ったキラル中心をもち,4方向に変換可能な官能基をもつ出発物質が魅力的です。
セコロガニンが透けて見えそう。
Daphenyllineを追加。
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/02/jacs24-1813.pdf
想定していたideal final step であるGrewe-type cyclizationがうまくいくと,8段階合成となり,すごくかっこよかったのですが。
回り道をすると,途中不要なジアステレオマーのほうが多くできてしまうという結果ですが,たいしたdrawback とは思えません。他のすばらしい骨格構築,官能基変換,立体制御などを見ると。
論文で強調されているのは「通常の」逆合成とは異なり,より複雑な系に逆合成することも有用であるというような事(?)。
2重結合から小員環(三員環や四員環)を作り,適当な結合を切断して官能基や立体を整えていく手法は,ごく普通の手法だと思うのですが,日頃からcomputer-aided synthesis planningを設計されている方から見るとこういう表現になるのでしょうか。
マイケル反応によるメチル基導入の代替法として,広く使えそうなシス-ヒドロメチル化を開発しています。
[2+2]付加と還元の2段階ですが,ここでの還元はアミドの還元まで含めると6個のハイドライドを使っており,2つのメトキシカルボニル基が2つのメチル基に還元されるレベル。収率64%は奇跡的。しかも立体選択的です。
(−)-Daphenyllineを追加。
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/02/jacs24-1262.pdf
カルボニルからC2酢酸ユニットを伸ばす方法はいろいろありそうですが,
ここでは,Wittigメチレン化(C1)+ヒドロカルボキシル化(C1)を使っています。定番になるかも。
4置換ベンゼンは3つの分子内Friedel-Crafts反応で組み立てます。
同じ反応を繰り返すことで(反応の種類が,少なくなり)合成経路はシンプルになっています。
評価すべきレトロシンセシスかと。
2つの不斉中心を持つ非環状化合物を,触媒的不斉合成で,調製して,ここからすべての立体を不斉誘導します。