ohira-sum@kxe.biglobe.ne.jp 2024年2月9日 4:44 AM (+)-Archangiumideを追加。 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/02/jacs24-2345.pdf 最新のair-stable な触媒を使ってring closing alkyne metathesis(RCAM)。アルケンやエステルがあっても平気,酸素があっても平気だから,使ってみたくなる。 末端アセチレンじゃなくて,メチルアセチレンに選択的なところも奥深い。Fürstner先生,実用性を次々証明する天然物合成,すごいですね。 最後のアセチレンからアレンへの変換が,ベンジルオキシの付け根の立体に関わらず,天然物の立体に収束するのは,ありそうなことですが, 保護基があると分解してしまうというのは,予想外でしょう。天然物そのものの立体が奇跡的に安定ということでしょうか。 実験した人は一人みたいですが,これくらいいろんなことが起きると,楽しかったことでしょう。 返信
大平進 2024年2月4日 6:16 PM (−)-Cephalocyclidin Aを追加 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/02/jacs23-26550.pdf エナミンとケトンの反応とマンニッヒ反応のカスケードだから”ダブルアルドール反応”みたいなもの。 フリーデルクラフツのアレーンをエノールエーテルに変えて展開したとのこと。 酸性に弱くなるので触媒の設計に工夫あり。アルドール後の脱水がおこるとキラリティーを失う問題も配位子によって解決した。 古典的な反応の綺麗なカスケードに触媒的不斉アルドール(エナミンの)を組み合わせ,ラジカル環化で仕上げています。 SI見ると環化にも一苦労してますが。 ケトンの隣が混み合ってても進むようなのでauxiliaryを使う手もありかもしれませんが,触媒が素晴らしいので,余計な提案です。 途中,中間体のeeあげるために再結晶してるんですが,ラセミ体を析出させて母液のeeを上げてます。X線解析はラセミ体。 こんなこともあるんですね。 返信
ohira-sum@kxe.biglobe.ne.jp 2024年1月29日 11:49 AM (+)-Heilonineを追加。 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/01/jacs24-1825.pdf 本年4件目のVeratrum Alkaloidです。 単眼症の羊が生まれた原因物質(Cyclopamine)とか, Hedgehog signalingとか,抗がん剤とか,生理活性が注目されているせいでしょうか。 4件ともAB環はWieland-Miescher ketoneで,EF環は別のキラルプールからです。 本件は金属によるC-H活性化が合成経路を合理化するというのが売りで, C-H lithiation, C-H borylation/iodation, C-H lactamization, C-H oxidation, に加えて,収束的なcarbonylative coupling, 光をつかうナザロフ環化(しかもdiastereoselective)と, 新しくて有用な反応の宝庫です 最終産物は四置換ベンゼンですが,出発物は一置換ベンゼンです。 11段階or13段階の合成と言っていますが,最後の還元と保護を2段階(27%)でやるか, 4段階(64%x86%)でやるかの違いです。両方書いたのは,11段階とすると最後の収率が気になるし, 13段階だと段階数にインパクトが欠けると感じたからでしょうか。 返信
大平 進 2024年1月24日 11:49 AM Euphorikanin A を追加。 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/01/jacs23-27225.pdf カルボニル基の隣からC5の末端オレフィン,反対隣からC4の末端オレフィンをアルドール反応で伸ばして,RCMをすると C3+C5+C4-C2(エチレン)で10員環ができる。 10員環→(トランスアニュラーアルドール)→5員環+7員環→(セミピナコール)→5員環+6員環 が骨格構築法になる。 生合成仮説から思いついたのことです。トランスアニュラーアルドールはともかく,セミピナコールまで一挙に進むというカスケード,どうやって思いついたのでしょう。 目的骨格が短工程で出来る見事な構築法ですが,10員環の2種類のアトロプ異性体を,C5,C4上の不斉中心によって作り分けるというのも大きな見せ所。 10員環上の置換基の相対立体配置によって安定なアトロプ異性体が変わると言ってしまえば当たり前ではありますが。 返信
ohira-sum@kxe.biglobe.ne.jp 2024年1月17日 12:19 PM Cyclopamineを追加 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/01/jacs23-25086.pdf vertramine の合成とそこからcyclopamine への誘導です。いずれも1960年代に正宗らによって初合成されてます。 最近生理活性が注目されているらしく,新しい合成法が,すでに2報,今年のjacs communicationに報告されてます。 photo-Nazarovの得意なグループと,不斉水素化が得意なグループの共同研究です。 特に印象的な反応は無いのですが,SIをながめると,相当厳しい反応条件を探し出している段階(photo-Nazarovも)がいくつかあり,苦労が読み取れます。 返信
ohira-sum@kxe.biglobe.ne.jp 2024年1月13日 4:15 PM Suffranidine Bを追加 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/01/jacs23-24493.pdf タイトルがシンプル total synthesis でしょうが,two step synthesis とか protonation controlled synthesis といいたいくらい。 Abstractの最初の文が”Efficiently generating intricate molecular complexity is a coveted goal in organic synthesis.” 著者の自信が伺えます。 キー化合物の求核性が低い理由を実際の反応例も含めて詳しく説明しています。 1段階目の反応は,種々の平衡の中,アルドール後脱水のためのプロトン化と最後の脱プロトン化が重要で,酸性アルミナに行き着いてます。 2段階目の反応はダブルプロトン化が必須で,さらにエピ化により熱力学生成物にするため,1M 硫酸100°C36hです。 エピ化についても重水素を使って2つの経路が実在することを証明しています。 新しい反応は無いんですが,化学をとても楽しむことができるのでお薦めです。 返信
ohira-sum@kxe.biglobe.ne.jp 2023年12月25日 5:21 PM Aleutianamineを追加。 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/12/jacs23-25533.pdf 徳山先生の少し前のbiomimeticな初合成も素晴らしいですが, このグループのnonbiomimetic 合成も素晴らしい。 チオフェンを使ったdearaomative cyclization は初とのことですが, 骨格を一気に作ってます。その他の芳香族を使った応用例にも広がりそう。 ジエンからβ,γ-不飽和ケトンへの変換は確かに”unconventional sequence” ですが,反応機構を見ると,ごもっともな変換反応で,一般にも使えそう。 多分,相当な時間をbromoalkeneの合成に費やし,最後は見事な解決でした。 返信
ohira-sum@kxe.biglobe.ne.jp 2023年11月16日 2:49 AM (-)-Caulamidine D and (-)-Isocaulamidine D を追加 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/11/jacs23-22335.pdf クライゼンで隣り合う4級不斉中心を一挙に作れなかったのは残念でしたが、アルキル化が選択的にできたのでよかった。 不斉誘導としては キラル二級アルコール→インドール上のキラル4級中心→隣の4級中心 asymmetric MECR と表現してますが catalytic enantioselective MECR もあるようなので、区別して diastereoselective MECR のほうがいいんじゃないでしょうか。 塩素化が非選択的だったのは、open chainだからやむを得ないところ。 モデル実験(SI)ではundesired のほうが1:3で主成してたから、本番で1.2:1の生成比ならラッキー。 MaimoneらのCaulamidine Aの合成が少し前に発表されてますが、11段階で塩素の付け根の立体を制御。 こちらは16段階ですが、 DEF環を一気に作るカスケードは素晴らしく、見劣りはしません。 反応機構もわかり易いけど、どうやって思いついたんでしょ。 返信
ohira-sum@kxe.biglobe.ne.jp 2023年11月13日 10:50 AM Phomopsene, Methyl Phomopsenonate, and iso-Phomopseneを追加。 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/11/jacs23-21170.pdf ナザロフでカチオンのあるスピロ4,5,4系を作って縮環5,5,5系に転位させてます。 ドライビングフォースとなる不安定な4員環は2+2光付加で合成しています。 機構を予想してデザインしたとは思えませんが,何をしようとして見つけたのでしょうか。 ナザロフでできる5員環カチオンを使って,いろんなカスケードがデザイン可能? ベックマン転位とカルボニルエン反応を組み合わせた5員環から6員環への拡大も特徴的です。 著者が言うように,5員環に置換したメチル基をメチレンにして6員環系に入れ込んでいる経路は 目新しい。 官能基変換が多く,必ずしも短段階合成ではないかもしれませんが,骨格合成のインパクトは大きいです。 返信
ohira-sum@kxe.biglobe.ne.jp 2023年11月4日 11:55 AM cyclopamineを追加。 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/11/jacs23-21760.pdf Baranです。 例によって,うまく行かなかった戦略がSIに乗ってます。 スピロTHFをいつ作るかが大きな課題だったようです。 モデルだとethyl carbonate でもうまく行って,キラルスピロ中心ができたので, それを使ってABC部分とカップリングしようとしてうまく行かない。 ABC部分をリチオ化して1,2付加でキラル3級アルコールとしてTsuji-Trostをやると t-Bocにしないとうまく行かないなど,天然物合成の難しさいっぱい。 各段階のoptimizationは0%からのものも多く,いつものことですが関心させられます。 当初の原料合成では保護基の脱着段階を減らすため新しい経路にしたり, 最後の脱保護も既知の2段階79%を1段階78%に改良したり,idealityへのこだわりですね。 返信
(+)-Archangiumideを追加。
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/02/jacs24-2345.pdf
最新のair-stable な触媒を使ってring closing alkyne metathesis(RCAM)。アルケンやエステルがあっても平気,酸素があっても平気だから,使ってみたくなる。
末端アセチレンじゃなくて,メチルアセチレンに選択的なところも奥深い。Fürstner先生,実用性を次々証明する天然物合成,すごいですね。
最後のアセチレンからアレンへの変換が,ベンジルオキシの付け根の立体に関わらず,天然物の立体に収束するのは,ありそうなことですが,
保護基があると分解してしまうというのは,予想外でしょう。天然物そのものの立体が奇跡的に安定ということでしょうか。
実験した人は一人みたいですが,これくらいいろんなことが起きると,楽しかったことでしょう。
(−)-Cephalocyclidin Aを追加
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/02/jacs23-26550.pdf
エナミンとケトンの反応とマンニッヒ反応のカスケードだから”ダブルアルドール反応”みたいなもの。
フリーデルクラフツのアレーンをエノールエーテルに変えて展開したとのこと。
酸性に弱くなるので触媒の設計に工夫あり。アルドール後の脱水がおこるとキラリティーを失う問題も配位子によって解決した。
古典的な反応の綺麗なカスケードに触媒的不斉アルドール(エナミンの)を組み合わせ,ラジカル環化で仕上げています。
SI見ると環化にも一苦労してますが。
ケトンの隣が混み合ってても進むようなのでauxiliaryを使う手もありかもしれませんが,触媒が素晴らしいので,余計な提案です。
途中,中間体のeeあげるために再結晶してるんですが,ラセミ体を析出させて母液のeeを上げてます。X線解析はラセミ体。
こんなこともあるんですね。
(+)-Heilonineを追加。
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/01/jacs24-1825.pdf
本年4件目のVeratrum Alkaloidです。
単眼症の羊が生まれた原因物質(Cyclopamine)とか,
Hedgehog signalingとか,抗がん剤とか,生理活性が注目されているせいでしょうか。
4件ともAB環はWieland-Miescher ketoneで,EF環は別のキラルプールからです。
本件は金属によるC-H活性化が合成経路を合理化するというのが売りで,
C-H lithiation, C-H borylation/iodation, C-H lactamization, C-H oxidation,
に加えて,収束的なcarbonylative coupling, 光をつかうナザロフ環化(しかもdiastereoselective)と,
新しくて有用な反応の宝庫です
最終産物は四置換ベンゼンですが,出発物は一置換ベンゼンです。
11段階or13段階の合成と言っていますが,最後の還元と保護を2段階(27%)でやるか,
4段階(64%x86%)でやるかの違いです。両方書いたのは,11段階とすると最後の収率が気になるし,
13段階だと段階数にインパクトが欠けると感じたからでしょうか。
Euphorikanin A を追加。
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/01/jacs23-27225.pdf
カルボニル基の隣からC5の末端オレフィン,反対隣からC4の末端オレフィンをアルドール反応で伸ばして,RCMをすると C3+C5+C4-C2(エチレン)で10員環ができる。
10員環→(トランスアニュラーアルドール)→5員環+7員環→(セミピナコール)→5員環+6員環 が骨格構築法になる。
生合成仮説から思いついたのことです。トランスアニュラーアルドールはともかく,セミピナコールまで一挙に進むというカスケード,どうやって思いついたのでしょう。
目的骨格が短工程で出来る見事な構築法ですが,10員環の2種類のアトロプ異性体を,C5,C4上の不斉中心によって作り分けるというのも大きな見せ所。
10員環上の置換基の相対立体配置によって安定なアトロプ異性体が変わると言ってしまえば当たり前ではありますが。
Cyclopamineを追加
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/01/jacs23-25086.pdf
vertramine の合成とそこからcyclopamine への誘導です。いずれも1960年代に正宗らによって初合成されてます。
最近生理活性が注目されているらしく,新しい合成法が,すでに2報,今年のjacs communicationに報告されてます。
photo-Nazarovの得意なグループと,不斉水素化が得意なグループの共同研究です。
特に印象的な反応は無いのですが,SIをながめると,相当厳しい反応条件を探し出している段階(photo-Nazarovも)がいくつかあり,苦労が読み取れます。
Suffranidine Bを追加
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2024/01/jacs23-24493.pdf
タイトルがシンプル
total synthesis でしょうが,two step synthesis とか protonation controlled synthesis といいたいくらい。
Abstractの最初の文が”Efficiently generating intricate molecular complexity is a coveted goal in organic synthesis.”
著者の自信が伺えます。
キー化合物の求核性が低い理由を実際の反応例も含めて詳しく説明しています。
1段階目の反応は,種々の平衡の中,アルドール後脱水のためのプロトン化と最後の脱プロトン化が重要で,酸性アルミナに行き着いてます。
2段階目の反応はダブルプロトン化が必須で,さらにエピ化により熱力学生成物にするため,1M 硫酸100°C36hです。
エピ化についても重水素を使って2つの経路が実在することを証明しています。
新しい反応は無いんですが,化学をとても楽しむことができるのでお薦めです。
Aleutianamineを追加。
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/12/jacs23-25533.pdf
徳山先生の少し前のbiomimeticな初合成も素晴らしいですが,
このグループのnonbiomimetic 合成も素晴らしい。
チオフェンを使ったdearaomative cyclization は初とのことですが,
骨格を一気に作ってます。その他の芳香族を使った応用例にも広がりそう。
ジエンからβ,γ-不飽和ケトンへの変換は確かに”unconventional sequence”
ですが,反応機構を見ると,ごもっともな変換反応で,一般にも使えそう。
多分,相当な時間をbromoalkeneの合成に費やし,最後は見事な解決でした。
(-)-Caulamidine D and (-)-Isocaulamidine D を追加
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/11/jacs23-22335.pdf
クライゼンで隣り合う4級不斉中心を一挙に作れなかったのは残念でしたが、アルキル化が選択的にできたのでよかった。
不斉誘導としては
キラル二級アルコール→インドール上のキラル4級中心→隣の4級中心
asymmetric MECR と表現してますが catalytic enantioselective MECR もあるようなので、区別して
diastereoselective MECR のほうがいいんじゃないでしょうか。
塩素化が非選択的だったのは、open chainだからやむを得ないところ。
モデル実験(SI)ではundesired のほうが1:3で主成してたから、本番で1.2:1の生成比ならラッキー。
MaimoneらのCaulamidine Aの合成が少し前に発表されてますが、11段階で塩素の付け根の立体を制御。
こちらは16段階ですが、 DEF環を一気に作るカスケードは素晴らしく、見劣りはしません。
反応機構もわかり易いけど、どうやって思いついたんでしょ。
Phomopsene, Methyl Phomopsenonate, and iso-Phomopseneを追加。
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/11/jacs23-21170.pdf
ナザロフでカチオンのあるスピロ4,5,4系を作って縮環5,5,5系に転位させてます。
ドライビングフォースとなる不安定な4員環は2+2光付加で合成しています。
機構を予想してデザインしたとは思えませんが,何をしようとして見つけたのでしょうか。
ナザロフでできる5員環カチオンを使って,いろんなカスケードがデザイン可能?
ベックマン転位とカルボニルエン反応を組み合わせた5員環から6員環への拡大も特徴的です。
著者が言うように,5員環に置換したメチル基をメチレンにして6員環系に入れ込んでいる経路は
目新しい。
官能基変換が多く,必ずしも短段階合成ではないかもしれませんが,骨格合成のインパクトは大きいです。
cyclopamineを追加。
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/11/jacs23-21760.pdf
Baranです。
例によって,うまく行かなかった戦略がSIに乗ってます。
スピロTHFをいつ作るかが大きな課題だったようです。
モデルだとethyl carbonate でもうまく行って,キラルスピロ中心ができたので,
それを使ってABC部分とカップリングしようとしてうまく行かない。
ABC部分をリチオ化して1,2付加でキラル3級アルコールとしてTsuji-Trostをやると
t-Bocにしないとうまく行かないなど,天然物合成の難しさいっぱい。
各段階のoptimizationは0%からのものも多く,いつものことですが関心させられます。
当初の原料合成では保護基の脱着段階を減らすため新しい経路にしたり,
最後の脱保護も既知の2段階79%を1段階78%に改良したり,idealityへのこだわりですね。