ohira-sum@kxe.biglobe.ne.jp 2023年7月29日 12:00 PM Retigeranic acid Aを追加 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/07/jacs23-13549.pdf 1622ページ前に同化合物の全合成が発表されていますが、同時期に投稿されたらしく、引用はありません。 それぞれ中国国立大学(浙江大学と蘭州大学)からの発信です。 オーソドックスな逆合成で、 A環:Conia, B環:アルキル化、C環:MHAT, D環:Prins, E環:ファボロフスキー(原料合成) 有名な環化反応ばかりです。 浙江大学グループがマニアックな転位反応を鍵反応としていたのと対象的。 それぞれの環化反応で条件設定には最適化にかなりの時間をかけています。 最後の水素付加の立体選択性が問題となりましたが、 目的物とその異性体が平衡混合物で生成する条件を見つけていますので、 分離、反応を繰り返せば、目的物に収束できることになります。 核環メチルを作りながら、5員環をつくる反ボールドウィン則のMHAT環化が印象的です。 返信
ohira-sum@kxe.biglobe.ne.jp 2023年7月25日 7:52 PM Caulamidine Aを追加。 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/07/jacs23-14215.pdf バラン研出身の若手らしい。 骨格の組み立ては基本アルキル化。 エチレングリコールのトリフラートとジアニオンの反応で六員環のメチレン鎖を作るという シンプルな逆合成。(実際にはモノアニオンによる段階的反応らしい。読んでないけど,Acc.Chem.Resに本人の総説あり。) 最大の見所は最後の水素付加です。 単なる水素のシス付加なのですが,接触水素化の収率6%に留まらず,HATの条件検討,additive の変換,追加などにより49%まで上げてます。 中間体がラジカルだから,こんなに窒素やベンゼン環が近くにあると,色々起きる。 重水素化体を使っての考察は楽しめます。 二つの水素が共に試薬から移動する分子間反応を優先させるための条件検討ということでしょうか。 返信
ohira-sum@kxe.biglobe.ne.jp 2023年7月17日 12:09 PM Waixenicin Aを追加 https://www.ohira-sum.com/?page_id=827 六員環部分はイリドイドによくある構造で1,5-ジアルデヒドが環化したもの。 そこは後の段階で作るのが一般的な戦略だろうけど、この論文は逆で、 不斉アセタール炭素を含んだラクトンから出発している。 なお、この不斉中心は最後の方の脱保護でエピ化するので、分離後、一方に収束させる。 トリフレートで電子を引っ張って環系を安定化しているのがポイントだけど、 それでも、PMBの酸化的脱保護はうまく行かなくて、(SIに記載) アルデヒドで “push-pull system”を作って成功した。 二つの環はちょっと特殊だから、いろいろ苦労があったのでしょう。 返信
ohira-sum@kxe.biglobe.ne.jp 2023年7月4日 6:05 AM (−)-Retigeranic Acid Aを追加 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/07/jacs23-11927.pdf ”4例しかない”過去の全合成は1985-1990に行われたもので、 Corey, Paquette, Hudlicky, Wender。私達世代のヒーローです。 転位反応の嵐です。マニアは大喜びでしょう。 5-5-5の環系をつくるのに 6 → 6-6-5 → 6-5-6 → 6-5-5 → 5-5-5。 最後に環上の官能基を全部還元的に除きます。 ラジカル環化で一挙に三環をつくるのとは対照的です。 炭素伸長反応も、ニトロアルドール、Wittig, sp2-sp2 クロスカップリング、エポキシ化/Meinwald 転移、TosMIC など多様で、反応機構の勉強になるでしょう。 返信
ohira-sum@kxe.biglobe.ne.jp 2023年6月30日 6:27 PM Daphnillonin Bを追加 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/06/jacs23-10998.pdf AD環が7-7がタイトル化合物だが、6-7の天然物の合成の先例が詳しく述べられ, 著名な研究者の2000年以降の成果がずらり並んでいる。 なぜかと言うと、この論文の合成の中間体(化合物19,5g調製)が多様な6-7の天然物に使えそうだから。 SIには19の構造と未合成の6-7天然物の構造が並べて示され,すでに射程圏内。 19の合成だけでも,いろんな流行の(多分)環化反応を使った,exellent work だと思うけど, 肝は生合成とも関連するWagner-Meerwein転移でしょうね。 予想外で,反応機構は検討中とのことだけど,論文中の説明で十分納得できる。 ラジカル環化をGrubbs II 触媒でやってるのは,親分の顔を立てるため? 返信
ohira-sum@kxe.biglobe.ne.jp 2023年6月26日 12:04 PM pentamycin を追加 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/06/jacs23-10974.pdf マクロラクトン化、HEW反応、RCMに加えて一般的な方法を提供したとのこと。 最終物が不安定なため、最後の脱保護が無いルートを考案。 高価そうな触媒を使ってはいるが、Krischeの不斉アリル化って標準になりそう。基質が一級アルコール。 不斉導入はすべてreagent controlです。 保護基を用いない所がエリスロマイシンの合成と対照的と言っているが、 立体制御も対照的ですね。 返信
ohira-sum@kxe.biglobe.ne.jp 2023年6月18日 10:59 AM Aberraroneを追加 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/06/jacs23-9459.pdf 5−5−5のトリキナンセスキテルペン(シクロヘキサンのないやつ)の合成は随分前に流行ったことがあり,ラジカルで一挙に3つの環を作るものもあった記憶。Mn-mediatedは無かったと思うがトリブチルスズを使うラジカル環化が注目された。 細かいことですが,asymmetric hydroboration はsubstrate + reagent の二重効果なのかreagent control のみなのか。 substrate controlだったら,すべての立体がcarveolの1炭素から誘導された事になり,かっこいいのに。 最後の1,4還元,1986,1995,1992,の方法がだめで,1952の方法で成功した。古い反応も大事ですね。 返信
ohira-sum@kxe.biglobe.ne.jp 2023年6月16日 7:09 PM scabrolide A, yonarolide を追加 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/06/jacs23-8805.pdf 2,3-cis 置換シクロペンタノンの合成はジャスモン酸合成を思いださせる。 cisの5−5系を酸化的に開裂する方法論は古典的。 1970年の野依の反応を選択性の異なるTTMの類縁反応と考えているのは面白い。 反応機構は知らないけど。 アシル化と分子内マイケル反応で骨格を構築するステップも戦略としては古典的といえる。 オーソドックスな戦略を金属触媒をうまく使って実現した感じ。 返信
ohira-sum@kxe.biglobe.ne.jp 2023年6月11日 10:27 AM (+)-Pedrolideを追加 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/06/jacs23-8332.pdf bicyclo[2,2,1]heptaneをペンタジエンのDA反応で作るのは強力な定番なんですね。 SIにtiglianeからの骨格変換が示されていて,これを参考にする逆合成もおもしろいと思うのですが。 不斉マイケルで不斉導入し,HAT-initiatied cyclopropanationでモノテルペン骨格を合成するとか, テトラジンを使ったジエン発生(クリックケミストリーですでに実績あり)でDA反応とか, 近年開発された有機合成反応を駆使した経路でした。 返信
ohira-sum@kxe.biglobe.ne.jp 2023年6月8日 3:40 PM ineleganolideを追加 https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/06/jacs23-7763.pdf バイオミメティック合成がすでに報告されているが、 この論文のほうが、目的物のみを与える短工程合成なので、 (多分)よりエレガントなルートといえるだろう。 最後の数段階は(多分)予想しなかった望ましい連続反応が 起こっており、結果として”cross-enolate coupling process” を達成したことになる。 返信
Retigeranic acid Aを追加
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/07/jacs23-13549.pdf
1622ページ前に同化合物の全合成が発表されていますが、同時期に投稿されたらしく、引用はありません。
それぞれ中国国立大学(浙江大学と蘭州大学)からの発信です。
オーソドックスな逆合成で、
A環:Conia, B環:アルキル化、C環:MHAT, D環:Prins, E環:ファボロフスキー(原料合成)
有名な環化反応ばかりです。
浙江大学グループがマニアックな転位反応を鍵反応としていたのと対象的。
それぞれの環化反応で条件設定には最適化にかなりの時間をかけています。
最後の水素付加の立体選択性が問題となりましたが、
目的物とその異性体が平衡混合物で生成する条件を見つけていますので、
分離、反応を繰り返せば、目的物に収束できることになります。
核環メチルを作りながら、5員環をつくる反ボールドウィン則のMHAT環化が印象的です。
Caulamidine Aを追加。
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/07/jacs23-14215.pdf
バラン研出身の若手らしい。
骨格の組み立ては基本アルキル化。
エチレングリコールのトリフラートとジアニオンの反応で六員環のメチレン鎖を作るという
シンプルな逆合成。(実際にはモノアニオンによる段階的反応らしい。読んでないけど,Acc.Chem.Resに本人の総説あり。)
最大の見所は最後の水素付加です。
単なる水素のシス付加なのですが,接触水素化の収率6%に留まらず,HATの条件検討,additive の変換,追加などにより49%まで上げてます。
中間体がラジカルだから,こんなに窒素やベンゼン環が近くにあると,色々起きる。
重水素化体を使っての考察は楽しめます。
二つの水素が共に試薬から移動する分子間反応を優先させるための条件検討ということでしょうか。
Waixenicin Aを追加
https://www.ohira-sum.com/?page_id=827
六員環部分はイリドイドによくある構造で1,5-ジアルデヒドが環化したもの。
そこは後の段階で作るのが一般的な戦略だろうけど、この論文は逆で、
不斉アセタール炭素を含んだラクトンから出発している。
なお、この不斉中心は最後の方の脱保護でエピ化するので、分離後、一方に収束させる。
トリフレートで電子を引っ張って環系を安定化しているのがポイントだけど、
それでも、PMBの酸化的脱保護はうまく行かなくて、(SIに記載)
アルデヒドで “push-pull system”を作って成功した。
二つの環はちょっと特殊だから、いろいろ苦労があったのでしょう。
(−)-Retigeranic Acid Aを追加
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/07/jacs23-11927.pdf
”4例しかない”過去の全合成は1985-1990に行われたもので、
Corey, Paquette, Hudlicky, Wender。私達世代のヒーローです。
転位反応の嵐です。マニアは大喜びでしょう。
5-5-5の環系をつくるのに 6 → 6-6-5 → 6-5-6 → 6-5-5 → 5-5-5。
最後に環上の官能基を全部還元的に除きます。
ラジカル環化で一挙に三環をつくるのとは対照的です。
炭素伸長反応も、ニトロアルドール、Wittig, sp2-sp2 クロスカップリング、エポキシ化/Meinwald 転移、TosMIC
など多様で、反応機構の勉強になるでしょう。
Daphnillonin Bを追加
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/06/jacs23-10998.pdf
AD環が7-7がタイトル化合物だが、6-7の天然物の合成の先例が詳しく述べられ,
著名な研究者の2000年以降の成果がずらり並んでいる。
なぜかと言うと、この論文の合成の中間体(化合物19,5g調製)が多様な6-7の天然物に使えそうだから。
SIには19の構造と未合成の6-7天然物の構造が並べて示され,すでに射程圏内。
19の合成だけでも,いろんな流行の(多分)環化反応を使った,exellent work だと思うけど,
肝は生合成とも関連するWagner-Meerwein転移でしょうね。
予想外で,反応機構は検討中とのことだけど,論文中の説明で十分納得できる。
ラジカル環化をGrubbs II 触媒でやってるのは,親分の顔を立てるため?
pentamycin を追加
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/06/jacs23-10974.pdf
マクロラクトン化、HEW反応、RCMに加えて一般的な方法を提供したとのこと。
最終物が不安定なため、最後の脱保護が無いルートを考案。
高価そうな触媒を使ってはいるが、Krischeの不斉アリル化って標準になりそう。基質が一級アルコール。
不斉導入はすべてreagent controlです。
保護基を用いない所がエリスロマイシンの合成と対照的と言っているが、
立体制御も対照的ですね。
Aberraroneを追加
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/06/jacs23-9459.pdf
5−5−5のトリキナンセスキテルペン(シクロヘキサンのないやつ)の合成は随分前に流行ったことがあり,ラジカルで一挙に3つの環を作るものもあった記憶。Mn-mediatedは無かったと思うがトリブチルスズを使うラジカル環化が注目された。
細かいことですが,asymmetric hydroboration はsubstrate + reagent の二重効果なのかreagent control のみなのか。
substrate controlだったら,すべての立体がcarveolの1炭素から誘導された事になり,かっこいいのに。
最後の1,4還元,1986,1995,1992,の方法がだめで,1952の方法で成功した。古い反応も大事ですね。
scabrolide A, yonarolide を追加
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/06/jacs23-8805.pdf
2,3-cis 置換シクロペンタノンの合成はジャスモン酸合成を思いださせる。
cisの5−5系を酸化的に開裂する方法論は古典的。
1970年の野依の反応を選択性の異なるTTMの類縁反応と考えているのは面白い。
反応機構は知らないけど。
アシル化と分子内マイケル反応で骨格を構築するステップも戦略としては古典的といえる。
オーソドックスな戦略を金属触媒をうまく使って実現した感じ。
(+)-Pedrolideを追加
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/06/jacs23-8332.pdf
bicyclo[2,2,1]heptaneをペンタジエンのDA反応で作るのは強力な定番なんですね。
SIにtiglianeからの骨格変換が示されていて,これを参考にする逆合成もおもしろいと思うのですが。
不斉マイケルで不斉導入し,HAT-initiatied cyclopropanationでモノテルペン骨格を合成するとか,
テトラジンを使ったジエン発生(クリックケミストリーですでに実績あり)でDA反応とか,
近年開発された有機合成反応を駆使した経路でした。
ineleganolideを追加
https://www.ohira-sum.com/wp-content/uploads/2023/06/jacs23-7763.pdf
バイオミメティック合成がすでに報告されているが、
この論文のほうが、目的物のみを与える短工程合成なので、
(多分)よりエレガントなルートといえるだろう。
最後の数段階は(多分)予想しなかった望ましい連続反応が
起こっており、結果として”cross-enolate coupling process”
を達成したことになる。